2023年10月18日
ライブドアニュースより転載
https://news.livedoor.com/article/detail/25187422/
2023年10月18日
習近平政権の締めつけから逃れ、自身の財産や身の安全を守りたいという一心で、日本に「潤」(ルン=逃げる)してくる中国人富裕層たち。
彼らは日本に長期滞在するため、主に日本で事業などを行うことができる在留資格、「経営管理」ビザを取得するケースが多いが、法務省の統計によると、その取得者は22年末に約1万6000人に上り、この10年で約4倍にまで増加している。
しかし、ある行政書士によると、このビザを取得する際、一部で偽装や不正が横行しているらしい。そして、今後は富裕層以外、中国人労働者が大量に日本にやってくる時代がくるのではないか、というのだ。
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取材に応じてくれたのは行政書士A氏。名前は伏せるが、中国人のビザ取得などに詳しい専門家だ。筆者が中国人富裕層による日本の不動産爆買いについて取材を進めていたところ、A氏が経営管理ビザの盲点を教えてくれた。
A氏によると、コロナ禍前、中国人富裕層は日本への投資目的で、自分の利益を増やすために経営管理ビザを取得する人が多かったが、コロナ禍を経て、その目的は大きく変貌したという。
それは、とにかく中国から脱出して日本に住みたいという移住目的の人が増えている、ということだ。利益追求よりも、まず自分の身を守りたいという気持ちの表れだといえるが、そうした切羽詰まった事情があるからか、ビザ取得に関して、一部で偽装や不正が行われているという。
A氏によれば、たとえば中国人ブローカーを雇い、ダミーの企業の登記簿や架空の事業計画書を用意させ、そこの社長となって経営管理ビザを出入国在留管理庁に申請する、といったことが行われている。
また、実態のない日本企業に在籍し、業務は行わないのに、そこで「技術・人文知識・国際業務」という別の就労ビザを不正取得するというケースもあるという。日本企業に就職するという形であれば、経営管理ビザよりも初期投資が少なく、取得までのスピードも早いため、こうしたやり方をとる人がいるというのだ。
経営管理ビザを隠れ蓑に
そもそも、経営管理ビザとはどのようなものなのか。法務省のサイトによると、「日本で貿易、その他の事業の経営を行い、または当該事業の管理に従事する活動を行うための在留資格」とある。
取得要件は
(1)申請にかかる事業を営むための事業所が日本に存在すること
(2)500万円以上の投資があること、または2名以上の常勤職員がいること
(3)事業内容が実現可能であること、および安定性、継続性があること、などだ。
在留できる期間は3ヵ月から5年までの5種類あり、通常は1年間、取得できるケースが多い。
中国人が日本に長期滞在でき、就労できる在留資格は、「研究」「外交」「教授」などさまざまあるが、冒頭で紹介したように、近年、取得者が増えているのがこの「経営管理」を目的とするビザだ。富裕層の多くはこれを取得するため、中間業者である移民コンサルタント会社などに依頼 。
そこを通じて、日本の行政書士に手続きを依頼するという。A氏は「移民コンサルタントは、行政書士を利用して富裕層を騙し、彼らから莫大な利益を得ている。こうした中間業者の存在こそ大きな問題」と語る。
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もちろん、日本で真面目に事業を行うため、会社を設立したり、店を開業したりする人もいるが、納税義務を果たしていない人もいる、とA氏。このような問題が起こる背景には、前述のように、日本で事業をしたりするよりも、「とにかく中国を脱出したい」という「本当の目的」があるからだ。
A氏は「問題なのは、経営管理ビザが『移住のための隠れ蓑』になってしまっていること。移住したあと、日本でやりたいことは別に何もない、という中国人も多いのです」と話す。
中国人であふれかえる未来
この話を聞いていて、筆者は以前書いた記事『日本に移住した「中国の富裕層」が、「意外な悩み」をかかえていることをご存知ですか』の中で、刺激の少ない日本での生活に飽き、ホームセンターでクギなどの工具を買って“ひまつぶし”をしている男性の話を思い出した。
その取材をしたときには、「そんなことが悩みなのか」と率直に驚いただけだったが、よく考えてみれば、経営管理ビザを取得して日本に滞在しているのにもかかわらず、事業もせず、毎日ただ遊んで暮らしているというのはおかしな話だ。
筆者の在日中国人の知り合いの中には、経営管理ビザを取得して来日した友人がおり、その人は「ビザ更新のために美容院やネイルサロン、カフェなど、比較的わかりやすい事業を行っている」と話していたそうだが、実体のない会社でビザ取得・更新をしている人も多いのだろう。
このような形で、一部では不正にビザを取得して日本移住を果たす中国人がいることについて、A氏は「日本社会にとってマイナスであり、広い目で見れば社会的な不安要因にもつながりかねない。
これまで経営管理ビザは比較的取得しやすいと言われてきたが、移住したい人が増えるにつれ、こうした不正の実態も明らかになってきた。今後、入管(出入国管理庁)はもっと厳しく対応するべきでしょう」と話す。
このように、日本で事業を行う予定もないのに経営管理ビザを取得し、日本のタワマンなどの不動産などを買って移住する人がいる一方、今後は中間層以下の低所得者層も日本に来るようになるのではないか、とA氏は推測する。中国ではいま、中国恒大集団、碧桂園などの問題に象徴されるように、不動産不況が深刻だ。
建設途中で放置された建物が多数存在し、職を失って困窮している建設関係者、労働者も多い。A氏によると、そうした人々の受け皿となり得るのが、日本で2019年4月に創設された「特定技能制度」だという。
同制度は、一定の技能、知識を持つ外国人に与えられる在留資格で、その分野は「建設」「介護」、「農業」など12分野14業種に渡る。目的は、とくに人手不足が深刻な分野の人材確保にある。学歴や関連業務の従事経験を求められない単純労働のため、外国人材側のハードルは低い。今後、日本の労働力を支えていく人々として期待されている。
A氏は最後にこう語った。
「今は富裕層を中心に経営管理ビザの取得が話題になっており、この流れはあと数年続くと思いますが、その先は特定技能の人材が大挙して日本にやってくる時代になるでしょう。これから日本の不動産を買うのも中国人、日本の不動産を建設するのも中国人といった、笑うに笑えない時代がやってくると思いますよ」
【もっと読む】『じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」』
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<転載終了>
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